ベロシティの記事より。
ガートナー社の調査によると、サプライチェーンをグローバルに展開している米国企業のうち、33%が製造拠点もしくは調達拠点を中国から別の場所にすでにシフト、もしくは今後2~3年のうちにシフトするという。ハイテク関連企業、製造業、食品飲料など、260社から回答を得た。
これはコロナパンデミック、ブレグジット、高い関税の影響によるもので、「中国離れ」は回答した企業のうち実に3社に1社に相当する。
中国からアメリカに輸入される品物の輸入関税はアメリカ税関がアメリカのバイヤーに請求するわけだが、最終消費者へのプライスにそのまま転嫁されるパターンがほとんどなので、アメリカ国民にとって、メイドインチャイナは割高なものになりつつある。
中国に対する姿勢はトランプ大統領本人よりも周辺の共和党員や民主党員のほうがむしろ強いため、次期大統領が誰になっても中国との接し方は変わらない可能性が高く、高い関税が近々外されるといった雰囲気は今のところない。
グラフはFTIコンサルティングが行った調査結果で、アメリカ国民が買いたい又は買いたくない製品はどこの国や地域からかを質問したもの。横棒の黒は「買う意思がある」。ピンクは「好みではないが結局買うと思う」。黄色は「買わない」。一番下が中国製品について。香港問題も影響してか、メイドインチャイナは買わないと回答したアメリカ国民は40%にのぼる。
アメリカの政治も国民も中国に対しては冷めてしまっており、「新冷戦」勃発かとの声も聞かれる。ただ旧ソビエトとの関係とは異なり、アメリカと中国はすでにビジネスで強く繋がってしまっている。そのため「COLD WAR(冷戦)」ではなく、「COLD SHOULDER」の状態と呼ばれている。COLD SHOULDER を直訳すると、冷たい肩。日本でいう解雇を告げるときの肩たたきや、無視、そっけなく振舞うという意味の英語だ。要するに、あなたとの関係はもう終わりにしますってこと。
ガートナー社は、「グローバルサプライチェーンは何年も前から混乱していたし、2年前の貿易戦争の時点で、企業は中国への過剰なアウトソースへの強い反省があった」としたうえで、
「そして今回、関税がトリガーとなって多くの企業が中国をサプライチェーンから外す決定を下した。中国に代わる製造拠点、調達拠点として、ベトナム、インド、メキシコに資源を移し始めている。企業にとっては、サプライチェーン再構築に初期投資がかさんでしまうが、いずれ良い方向に向くだろう。それはグローバルサプライチェーンの可視化が向上し、それによる企業活動のスピードが向上するからだ」と述べ、長期的に見れば「中国離れ」はアメリカにとってプラスになるとの見方を示している。
貿易戦争に端を発した米中の倦怠期。両者の距離は、コロナで決定的に広がってしまった。