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WAGYUバトル

現在、アメリカでひとつの戦いが勃発している。その戦いの名は、WAGYUバトル。和牛。いわずとしれた日本の誇る食肉用の牛。だがアメリカ市場には、オーストラリア産の WAGYU が大量に出回っている。

日本の和牛も、もとをただせば国内の在来種と外国品種と掛け合わせたものが多い。そもそも明治以前の日本には牛を食べる文化がなく、牛といえば、主に農作業用であった。20~30年前、日本の牛として「KOBE BEEF(神戸牛)」がアメリカで広く認知されていた。

アメリカで展開しているステーキハウス「KOBE STEAKS」の存在のおかげで、松坂牛は知らなくても神戸牛を知っているアメリカ人は多くいたものだ。有名なのが、ヘリの墜落事故で今年の1月に亡くなった元 NBA 選手、コービー・ブライアント(KOBE BRYANT)の名前の由来。お父さんが神戸牛の美味しさに魅了され、息子に KOBE と命名したという。

日本発の食品素材のなかでも、これほど世界中に美味しさが認知され、ブランドが確立しているのも珍しいのではないだろうか。ここまで力のあるブランドに育つとは、誰も想像していなかったにちがいない。

しかし現在、アメリカではオーストラリア産の WAGYU が日本産の半値以下で売られている。日本の和牛が1970年代にアメリカのコロラド州に研究目的で連れていかれ、そこから和牛の精子がアメリカやオーストラリアに流れたのではといわれている。オーストラリアはハイテクを駆使して、より多くの WAGYU を生産しマーケットに出す。効率重視、利益重視だ。

日本は生産者自身が産ませ、食べさせ、太らせ、最高の和牛に仕上げていく。 効率や利益よりも品質重視だ。日本の生産者はコストの70%を占める肥料に最も気を使っている。酸性・アルカリ性のバランスが悪いと食欲が低下し、霜降りのつき方にも影響してしまう。出荷するまでの飼育期間も、アンガス牛の平均1年半に対して、2年半かける。オーストラリアの生産者は、日本の飼育方法は牛舎で食べさせ続けているばかりで、オールドファッションだと言い切る。オーストラリアでは広大な牧場に放たれ、牧草を食べて育つ。

実際、同じ和牛でも日本産とオーストラリア産の霜降り状態にはかなり違いがみられる。

2023年には、全世界の WAGYU 市場の売上高は1兆円にのぼると言う。果たしてそのうちの何割を日本の和牛が占めることができるだろうか。

もともと食肉の輸出には、さまざまな制限がかかっている。多くの国が自国の畜産業保護を名目にした輸入制限をかけているし、国ごとに異なる基準の検疫もクリアしなければならない。しかも和牛には、ブランドを守るための輸出制限もある。これに物流費がかかれば、コストはおのずと上がる。

果たしてアメリカ人は、値段が2倍以上する日本の和牛を選んでくれるだろうか。

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